マイメリブルー
マイメリブルーは、イタリアのマイメリというメーカーが出している透明水彩絵の具です。
公式サイト (ただし、イタリア語と英語しか対応していません)
日本では大日本美術工芸さんが代理販売をしており、大きな画材屋さんやネットショップで取り扱いがあります。いろんなところで売っているわけではないので、「近所の画材屋さんには無いよ〜」という方もいるかもしれません。でも、素敵な絵の具がたくさんあるので機会があればぜひ使ってみてください!ネットでは簡単に買えますし、画材屋さんにお伝えすればお取り寄せしてくれると思います!
マイメリブルーは単一顔料の絵の具であるということを売りにしています。
単一顔料であることによって色の透明感や、澄んだ色味、顔料の特徴による微妙なニュアンスが楽しめる絵の具です。
さらに、他では見ることのない顔料で絵の具を作っていたりして、そういう意味でも楽しいです。
マイメリブルーで一番人気の色はなんといっても「インディゴ」です。通常、インディゴの絵の具は混色で作られていますが、マイメリブルーのインディゴは天然の藍から作られています。その絶妙な色味に魅せられる方が多く、インディゴは人気色となっています。天然の藍というロマンも感じられますしね!もちろん私も大好きです!
ですが、インディゴはすでに人気なので使っている方が多いと思います。そこで私は隠れた名絵具であるポッツォーリアースをご紹介します。
ポッツォーリアース
不思議な名前の絵の具ですが、ポッツォーリはイタリアの地名です。
場所でいうとイタリアの足首あたりで、ナポリ圏内だそうです。
ナポリといえばベスビオ(ヴェスヴィオ)火山です。古代ポンペイに大きな被害をもたらした火山としても有名ですね。
地図を拡大するとこんな感じ。左側にポッツオリがあり、右側にベスビオ山があります。(ポンペイは右下の方にあります)
このあたりの土は火山の影響を受けている赤土(酸化鉄を含んでいる)ですので、ポッツォーリの土の色というのは赤っぽい色になるわけです。
つまり、ポッツォーリアースは火山の色と言ってもよいのでは?ロマン感じますね!
ちなみにネイプルスイエローのネイプルはナポリのことなので、ネイプルスイエローとポッツォーリアースを一緒に使うとイタリアの風を感じられるかもしれません(?)
絵の具一つから、地理も学べるなんて、絵の具って本当に魅力的ですね。
ちなみにベネチアンレッドという色も酸化鉄の絵の具としてよく見ますが、ベネチア(ヴェネツィア)はここです。画像の上の方の赤文字のところです。
ヴェネツィアは半島の付け根の方なので、ポッツォーリとは全然違う場所ですね。このへんにも火山があるんでしょうかね。
PR102(酸化鉄)
使われている顔料はPR102で、いわゆる酸化鉄です。
しかも天然の酸化鉄。ポッツォーリアースは天然の酸化鉄を含んだ絵の具なのです。詳しい製法はわかりませんが、酸化鉄(いわゆる赤土)をそのまま顔料にしちゃっているということなのでしょうか。ロマンです。
タイトルにテラコッタカラーと書きましたが、テラコッタというのがそもそもイタリア語の「焼いた土」という意味なので、イタリア(のポッツォーリ)の土からできているこの絵の具は、まさにテラコッタカラーなのです。
酸化鉄といえばPR101が有名ですが、こちらは合成酸化鉄です。土をそのまま使うと製品にバラツキができてしまうので科学的に合成しているようです。代表的な絵の具としては、ホルベインのインディアンレッド、W&Nのバーントシェンナやベネチアンレッド、クサカベのベネチアンレッド、そしてマイメリブルーでもベネチアンレッドはPR101です。
PR101を使った絵の具はとにかくめちゃくちゃたくさんあります。
枯葉庭園さんの記事でめちゃくちゃ詳しくレビューされていますので、そちらをご参照ください。私はこの記事で酸化鉄ファンになりました。
実際の色
色としては半透明色です。不透明色というほどしっかりとした色味ではなく、透明色ほどの鮮やかさはりません。自然なアースカラーです。酸化鉄の絵の具には不透明色もありますが、ポッツォーリアースは結構薄めです。
土の色ではありますが、実際の色はピンクブラウンという感じで、薄く塗るとピンクみが強いです。ピンクといっても花のように彩度の高い鮮やかなピンクではなく、落ち着いたピンクです。
粒子は細かい感じで、粒状化などは見られません。スッと綺麗に塗ることができます。
ややくすんだ感じと、粒子の細かい感じから、ややマットで粉っぽい印象を受ける色です。それがまさに土という感じがします。
この絶妙な自然な色合いのおかげで、人工的な感じが全然なく、自然のものを塗るときにとても重宝します。
使い方の例
例えば人の肌の赤み。血ほど濃い色ではなく少しだけくすんでいることで、頬の赤みや、皮膚の薄いまぶた、ノーメイクの唇などに自然になじみます。
そして植物。茎の赤っぽい部分に使っても、緑色と綺麗に調和します。
テラコッタカラーを活かして、テラコッタでできている人工物を塗れば本物のテラコッタのような色にすることもできます。くすんだ色味は絵をアンティーク調の雰囲気にすることもできます。
半透明色のため、ガツンと色が乗るわけではないので、ふわ〜っと色づけることができます。
似ている色と比較
酸化鉄(PR101、PR102)を使った絵の具はたくさんあるので、手持ちのものと並べてみました。ベネチアンレッドもシナバーもどちらも不透明色と分類されているものです。がつんと濃い色がのります。ポッツォーリアースはそれと比べると発色は穏やかです。それぞれ使い分けても楽しいですし、好みのものを使うのもいいですよね。選択肢が広いので、自分の好みに合わせられます。
ちなみにホルベインでいうと
「手に入れられる絵の具はホルベインだけだよ〜!」という方のために、ホルベインの絵の具もご紹介します。
ライトレッドとインデアンレッドです。
どちらもPR101という顔料をつかっていますが、それぞれ微妙に色が異なります。さらに、ライトレッドは半不透明、インデアンレッドは不透明なので、透明色であるポッツォーリアースとは結構色が違いますので、ホルベインにはポッツォーリアースのような色味は残念ながらありません。
ちなみに天然の黄土
ポッツォーリアースは天然の酸化鉄(赤土)を含む絵の具だと書きましたが、天然の黄土を含む顔料はPY43というものです。
こちらはホルベインのローシェンナ、W&Nのイエローオーカーライト、イエローオーカー、レンブラントのゴールドオーカー、ローシェンナ、ターナーのイエローオーカー、Qorのローシェンナ、イエローオーカーなどがあります。
イエローオーカーだったりローシェンナだったりしますが、このあたりの色の名前の付け方はメーカーによるので色名ではなく顔料の番号で見た方がいいです。同じイエローオーカーという名前でも、ホルベインはPY42の合成黄土の顔料を使っています。合成の方が色がはっきりと濃く出がちです。(天然と合成どっちがいいとかいうことではなくて、ちょっと違いがあるということです。)
天然の赤土と天然の黄土で混色して塗るってこれもロマンですよね。私はここにマイメリブルーのインディゴ(NB1:天然の藍)を入れて、すっごい渋い赤青黄で絵を描いてみたいなと思いました!
まとめ
ポッツォーリアースはその色の綺麗さ、使いやすさはもちろんのこと、ロマンも感じられる絵の具です。
赤茶色の絵の具をお探しでしたら、候補のひとつに入れてみてはいかがでしょうか?
マイメリの絵の具に興味を持った方へ。
下にリンクを貼りましたが、使いやすい色がセットになっている「イントロセット」や、マイメリの絵の具の全90色がちょっとだけ紙につけてある「ドットシート」もありますので、こういうものから買ってみてもよいかもしれません。イントロセットは5色をバラで買うよりもセットで買った方が少しお得だとか。