吉祥「錬岩」使ってみた

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以前から気になっていた錬岩を使ってみたら楽しかったのでご紹介します。

「錬岩」は日本画の画材ですが、私は透明水彩をメインで使用していますので、透明水彩ユーザーから見た視点で「錬岩」をレビューします。

「錬岩」とは?

錬岩とは、吉祥が発売している絵の具です。

「ねりいわ」と読みます。

「ねりいわ」で漢字変換すると、「練岩」となりますが、「」ではなく「」です。金偏です。この字はこの錬岩で初めて見た気がしていたのですが、「錬金術」の「錬」ですので、「鋼の錬金術師」でがっつり見ていました。

ちなみに、Twitterなどでは「練岩」と書いている方も結構いるので、錬岩についてのつぶやきを探す際は、「錬岩」だけでなく「練岩」でも検索すると情報がたくさん出てきます。

吉祥の公式サイトはこちら

商品説明によると、新岩絵具と接着成分であるメディウムを練り合わせたものだそうです。こうすることで、岩絵具を手軽に使えるものだそうです。

新岩絵具とは?

そもそも、新岩絵具とはなんなのかという前に、「岩絵具」とはなんなのか?という説明を簡単にします。

岩絵具とは、すごく簡単にいうと、きれいな色の岩を細かく砕いてサラサラの砂のようにしたものです。日本画で使われるもので、そのきれいな砂を、膠(にかわ)という動物のコラーゲンと混ぜて紙に塗ります。自然界にある岩を使っているものは、そうでないものと区別するために「天然岩絵具」とか「岩絵具(天然)」と表記されたりしています。有名なものには、藍銅鉱(アズライト)という岩から作られた「群青」というきれいな青い絵具があります。

天然の岩絵具はすごく綺麗ですが、自然界にある岩だけでは表現できない色もあります。

そこで金属やガラスをもとにして科学の力で作られたのが新岩絵具です。

岩絵具は、色も綺麗ですが、他の絵具との大きな違いはその質感です。細かい砂を紙にくっつけているので、表面がすごくザラザラしています。さらに、岩に含まれる成分によって光を反射してキラキラするのです。ラメとは違う、上品なきらめきがあります。それが、岩絵具の魅力にもつながっています。

詳しく説明されているサイト→武蔵野美術大学造形ファイル

「手軽に」とは?

錬岩は、手軽さも重要なポイントです。

ですが、見た目は顔彩そっくりなので、「顔彩も手軽だけど何がちがうの?」となる方も少なくないと思います。

それについては、岩絵具というものを材料にしているという前提について触れる必要があります。

上述したように、岩絵具というものはそれだけでは使えません。砂のような感じなので、それを紙にくっつけるための糊が必要です。透明水彩でいうところのアラビアゴムの役割を果たすのが、膠(にかわ)です。

日本画について詳しくないのですが、膠はアラビアゴムのように顔料(岩絵具)と混ぜてチューブに詰めて売るということができないようなのです。ですので、岩絵具で絵を描くときは毎回膠と混ぜる必要があるのです。しかも膠は、固形で売っているものもあり、それは湯煎などで溶かしてから使います。岩絵具を使うには、結構手間がかかるのです。

それを、「水のついた筆でぺろっと撫でれば使えるよ」というふうにしたのが錬岩ですので、「手軽に」というわけです。

透明水彩などはそもそも手軽ですが、日本画はそもそもが手間がかかるので、日本画画材の中では手軽な方というくらいの感じです。

新岩絵具を手軽に使える錬岩

まとめると、

岩絵具はキラキラしていますし、粒子を感じる独特の質感が魅力です。でも使うのがちょっとめんどくさい。それを手軽に使えるようにしたのが錬岩だということです。

顔彩ももちろん手軽に使えます。ですが、塗ったときの質感が全然違うので、「同じ四角い枠に入っている」というだけで、ほかは全部違うと思ってもよいのではないかと思います。

錬岩の色

錬岩は、12色で1セットになったものがA〜Cの3セットあります。

公式サイトの色見本のページ

公式サイトの色見本はパソコン上で作られた色のようなので、実際の色とは結構ちがいますが、なんとなくのニュアンスを知ることはできます。

どのセットも、黄色系、赤系、青系、緑系などの基本的な色がそろっているので、どれを買ってもどんな色でも塗ることができます。

見たところ、Aセットが一番ベーシックな組み合わせで、Bセットは雅な色の組み合わせ、Cセットはくすみカラーの組み合わせという感じがしました。

価格はAmazonで4,556〜4,705円です。なぜかセットごとにバラツキがあります。

(ただし、通販の場合は価格が変動したり、送料の問題もあるので、どこで買うのが一番安いかはその時のタイミングや同梱するものの有無、お住まいの地域によって変わるかと思います。)

ゆめ画材さんでは、セット売りだけではなく、バラでも買うことができます。

私は欲しい色がセットをまたがっていたので、バラで購入しました。

実際の錬岩の使用感

ここからは私が購入した錬岩についてレビューします。

私が購入したのは、黄緑、錦、金黄、紅辰砂、桃、紫銀、群青、納戸、水群青、草緑、鴬緑、皮鉄の12色です。

なるべく色がバラけるように買いました。

この色見本を見ると、「うっす〜!」って感じがしますが、これは画像の問題ではなく実際にも薄いです。

どれも一度塗りですが、一度ではこのくらいの薄さです。

黄緑はほぼ見えません。

岩絵具も一度塗りだと薄い感じがする色もあるので、そういうところも岩絵具っぽいのかもしれません。

1度乾かしたものの上からもう一度塗るとこんな感じ。2度塗ると、結構はっきりと色が出ます。

色見本を塗ってみた感想

岩絵具はキラキラするのですが、錬岩もほんの少しだけキラキラします。ですが、本当に少しだけです。

あと、厚く塗ったところは膠のテカりのようなものがあります。画像ではうまく写っていませんが、実物は端っこの方がテカっとしています。

粒子感はすごくあります。すべての色が、透明水彩で言うところのḠ色のような感じです。薄い色だとわかりにくいですが、濃い色だとはっきりわかります。

ぬるっとした感じがあるので、半乾きのときに筆でこすると、下の絵具が結構動きます。

絵具の質感

絵具の質感を動画で載せました。

筆で溶いているときから、ヌラヌラもったりとした質感がわかります。ですが、思ったよりも早く溶けました。透明水彩と同じくらいの簡単さです。

透明水彩でこういうヌラっとした絵具だと、固めたものを溶くのにも結構時間がかかったりするので、「ヌラヌラ=溶きにくい」だと思っていましたが、錬岩はヌラヌラだけど溶きやすい絵具です。

(さっきからヌラヌラというあまり見かけない擬音語を使っていますが、通じていますでしょうか。心配。)

絵を描いてみた

まずは背景の意味も込めて、ざっくりと塗ってみました。

黄緑と水群青を使っています。

黄緑は色見本ではほぼ見えませんでしたが、こうして絵にするとほどほどにぼんやりとした色が出ていい感じです。

水群青の部分を見てもらうと、かなり粒子感があるのがわかるかと思います。透明水彩で粒状化する色(ウルトラマリンやセルリアンブルーなど)よりも、もっと粒の感じがあります。もはや粉を塗ったみたいになっています。

この部分は、水を先に塗ってから絵具を置いています。そうすると、こんなふうに粒っぽくなります。

実際に塗ってるところはこんな感じ。

透明水彩とちがって、粘りがあるのがわかるでしょうか。

この塗り心地は、岩絵具を塗っているときと近いものを感じます。

乾いたらこんな感じです。

花の部分は、桃と紅辰砂、茎の部分は鴬緑と黄緑を混ぜて使っています。

ボコボコした水彩紙に塗っているので、凹みに粒子が溜まっています。

質感を活かして、透明水彩と併用する

透明水彩と錬岩は混ざりません。そして、すごく粒状化する。

この性質を活かすと、複雑な色を作ることができます。

・草緑+リーフグリーン(HWC):透明な絵具と錬岩の混色

緑と緑の混色ですが、はっきりと分離しています。

・紫銀+ブリリアントピンク(HWC):不透明な絵具と錬岩の混色

白の混じったパステルカラーとも混ぜてみました。わかりやすく分離しています。

・錦+コバルトターコイズ:グラニュレーション(粒状化)色との混色

コバルトターコイズはG色なので通常は沈み込む色ですが、沈み込まずに端っこにたまるという不思議な動きをしています。

・紅辰砂+イエローオーカー

濃い色の錬岩と、薄い(明るい)色の透明水彩の混色で、さらに色相もぜんぜん違う2色を混ぜるととてもはっきりと分離していることがわかります。

・桃+トランスペアレントイエロー

桃は結構発色が弱いので、トランスペアレントイエローに負けてよく見えません。でも、トランスペアレントイエローだけ塗っていたらもっとフラットな色面になるので、影響はしていると思います。

・桃+ネープルスイエロー

同じ桃を使っていても、こっちはわかりやすく分離しました。どの透明水彩と合わせるかによっても色の見え方がちがってきますね。この分離はかわいい色同士で結構好きです。

・鴬緑+レモンイエロー

色相が近いので分離はわかりにくいですが、周囲にレモンイエローのフチみたいなのができています。

・水群青+チタニウムホワイト

よく混ぜてから塗ったのですが、分離しているどころか白が浮いちゃってます。全然混ざる気がありません。これはこれでおもしろい表現ができるかもしれないです。

他にもいろんな組み合わせがつくれるはず!

分離色づくりのポイント

濃い色の錬岩明るい色の透明水彩を混ぜる

明るい色同士を混ぜる

錬岩はどの色も透明水彩の下に沈み込むので、どんな透明水彩と合わせても分離が見られると思います。ですが、上記の組み合わせにすると、よりはっきりとした分離色が楽しめます。

!重要な注意事項!←追記(2022/04/28)

紫銀のパッケージはなくしてしまったようです

これはそれぞれのパッケージの裏面です。

11色中8色に警告マークがついています。(この様子だと、紫銀も警告マークだろうな)

この警告マークがついている色は、重金属を含んでいるということです。大人が絵に使うぶんには大きな問題などはないのだと思いますが、子供が口にしてしまったりすると危険なので、子供の手の届くところには置かないなどの注意が必要です。

透明水彩だと「カドミウム」とか「コバルト」と名前についているのでわかりやすいですが、日本の色名がついているとわかりにくくてうっかりしてしまいます(私です)。

これ以外の色はわかりませんが、他の色も重金属を含んでいる可能性はあります。

絵の具としては楽しい絵の具なので、気をつけながら楽しみましょう♪

まとめ

錬岩は、その独特の質感が楽しい画材です。

錬岩だけ使って日本画風の絵を描くのはもちろんですが、透明水彩や顔彩などと一緒に使うことで表現の幅が広がったりもします。

セットで買うのはハードルが高いなという場合でもバラで好きな色から買うことができるので、まずは1色使ってみてもいいかも?と思いました。その際は、ちょっと濃いめの色にすると、より錬岩らしさを楽しめるかなと思います。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました♪

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