2022/12/03 追記
【この記事に書いてあること】
・顔彩の色の紹介
・顔彩はほとんど透明水彩と同じように使うことができる
・顔彩だけの特徴もある
顔彩とは?
顔彩とは、顔料(色のもととなる粉)を膠(にかわ)やアラビアゴムで固めたものです。
膠を使用しているので、透明水彩よりも定着力(紙にくっつく力)が強いとされています。
いろいろなメーカー(吉祥、呉竹、ナカガワ胡粉など)から販売されていて、Amazonや楽天などでも購入することができます。実店舗では、画材屋さんなどでは取り扱っているところが多いとは思いますが、すべての色が揃っているところなどは限られる感じです。
私は吉祥の48色セット+単色で追加した色をいくつか持っています。

普通の色の他に、パールやメタリックな顔彩もあるよ♪


こういう感じで、四角いケースが箱にはいっているよ!
箱の表面は布が貼ってあって、高級感がすごい!
顔彩の色見本
吉祥のセットは48色セットの他にも8色、12色、18色、24色、35色、60色のものがあります。

めちゃくちゃバリエーションがあるね
吉祥の24色セット
24色セットがほどほどの量でわかりやすいのではないかと思うので、24色セットに入っている顔彩で説明したいと思います。
24色セットはこんな色が入っています。→吉祥のホームページ
色見本はこちら。


ところどころ抜けがあってすみません(汗)
色相環に並べ替え
顔彩セットは並べ方が独特で、色相環とは合っていません。
色相環に慣れている人にはわかりにくいかもしれませんので、色相環に合わせて並べ替えてみました。

茶色系だけは色相環とはズレたところにありますが、だいたいこんな感じではないでしょうか。

こうしてみると、緑系が充実しているね
透明水彩との比較
ホルベインの透明水彩24色セットとの比較
顔彩と透明水彩はなにが違うのか気になっている方も多いようなので、比較してみます。
比較的手に入れやすいかつ、広く使われているにホルベインの透明水彩と比較してみます。

顔彩の24色セットとホルベインの透明水彩24色セットを並べてみるとこんな感じ。
24色セット同士を比較すると色のラインナップが微妙にちがいます。顔彩は緑系が充実している感じがしますし、透明水彩はオレンジ・黄色〜茶系が充実しています。
緑系は顔料の種類があまりないので、ふつう透明水彩では色幅が狭くなりがちです。特に単一顔料にこだわると色数は少なくなります。ホルベインは単一顔料へのこだわりよりも使いやすさなどを重視しているのか、複合顔料で使いやすい色を取り揃えています。
それでもなお、顔彩のほうが緑系は多いです。単一顔料へのこだわりはまったくなく、それよりも使いやすさなどに全力投球している感じがしました(個人の感想)。
透明水彩で顔彩24色セットを再現
24色セット同士を比較したら結構違う感じになりましたが、「顔彩の24色セットを再現する」ということを目指してホルベインの透明水彩全108色の中からピックアップします。

左の表をもとに、似ている色を探して塗ってみました。
ほとんどの色で似た色を見つけることができたのですが、緑系はぴったりくる色がなく、やはり顔彩の独特の色だということもわかりました。もちろん、透明水彩でも青や緑に黄色を混ぜたりしてつくることはできる色です。また、ホルベインにこだわらなければ透明水彩でも似た色はあります。
最初から自然な植物に使えるような緑色が充実しているのが顔彩の特徴といえるかもしれません。

似ているけれど若干ちがう。
若干ちがうけれど似ている。
代わりがきくような、きかないような。
そんな微妙なところですね。
顔彩と透明水彩のちがいは?
結局、どこがちがって、どこが同じなの?という話です。
なお、吉祥のwebサイトには「透明水彩絵具のような感覚でご使用いただけます」と書いてあります。
材料
どんな絵具も、顔料の粉と、それらをまとめる糊のようなものでできています。
顔料
透明水彩も、顔彩も「顔料」という色の粉がもとになっています。そこは共通しています。
吉祥では「原料として使用している顔料は水干絵具にも使用している高品質な顔料」を使用しているとのこと。
上羽絵惣では「日本画に最適な高級顔料」を使用しているとのことです。
※吉祥の説明に「水干絵具にも使用している」という文言があるためか、顔彩の原料=水干絵具だと思っている方もいるようですが、あくまでも水干絵具と同じ顔料を使っているということです。
糊
透明水彩はアラビアゴム、顔彩はアラビアゴムと膠(にかわ)を使っているそうです。
その点で、顔彩の方が紙にくっつく力(定着力)は強いとされています。ただし、体感としては、定着力が強いかどうかは実はよくわかりません。
塗った顔彩が乾いたあとでも、水をかければとれます。
膠が入っていると言ってもほんの少量なんでしょうかね。膠がたくさん入っていたら、筆でペロッとなでるだけで溶けるなんていうことはありませんもんね。(紙に染み込んでいる色もあるので真っ白なるわけではありませんが、表面の色は落ちます。それは透明水彩でも同じです。)
上羽絵惣では「定着剤と天然高級デンプン質」を使用しているとのことです。天然高級デンプン質がなんなのかは残念ながらわかりません。
使用感
顔彩の方が全体的に溶けやすい感じがします。水をつけておいておくと、こってりと溶けます。
「顔彩は濃い」という話も聞いたことがありますが、それは使い方による影響もあります。
顔彩は透明水彩よりも水で溶けやすいので、筆にたくさんの絵具がつきます。その筆のまま絵を描くと絵具がたくさん紙について、色が濃い状態になります。
顔彩をパンから直接紙に乗せると濃くなりますが、水彩のように一度パレットで水と混ぜ合わせると薄くなります。「顔彩は濃くて使いにくい」と感じている方は、パレットか溶き皿にとってから塗るとよいでしょう。

溶き皿を使うと、濃度はコントロールできます。
色の種類
顔彩の24色セットに入っている色は、ほとんどが透明水彩でも同じような色がありますが、顔彩にしかないような色もあります。
質感
よく、顔彩のほうがマットな質感(ツヤのない感じ)と言われています。
そこは微妙なところで、「色による」という感じがしました。また、「メーカーによる」という感じもします。
顔彩には透明感がある色と、不透明な色があります。透明感がある色はマットな感じはしません。一方、不透明な色はマットな感じがします。
どちらもあるのですが、不透明になる色のほうが圧倒的に多いです。そのため、全体として「顔彩=マット」という印象になるのかなと思いました。顔彩だからマットというよりも、マットな不透明な色が多いということかなと思います。
そして、顔彩は透明水彩よりも「もったり」とした使い心地ではあります。透明感のある色も透明水彩ほど軽い感じではなくやや重さを感じます。そのあたり、学童用のぺんてるエフ水彩などの質感に似ていると思いました。
不透明な顔彩は不透明水彩(ガッシュ)とも似ています。
不透明水彩(ガッシュ)については↓の記事に詳しく書いてあります。
価格
Amazonで比較してみると、2021/05/20時点では、
吉祥の顔彩24色セット 2,298円
ホルベインの透明水彩24色セット 3,290円
顔彩の方が圧倒的にお求めやすい価格です。
ちなみに他のメーカーの顔彩の24色セットの価格です。
呉竹 1,804円
あかしや 2,219円
墨運堂 2,486円
ナカガワ胡粉 3,168円
上羽絵惣 3,410円
結構価格にバラツキがありますが、吉祥はちょうど真ん中くらいになります。
結構安めな感じなのですがそのぶん一色の量は少ない感じがします。コスパ的には良いかどうかわかりません。
顔彩は和紙との相性がいい?
顔彩は和紙との相性がいいという噂を聞いたので、検証してみました。
使用したのはマルマンの画仙紙です。

まずはにじみ度の低い<越前>です。透明水彩でも顔彩でも同じような感じでした。

つぎはややにじみやすい<因州>です。こちらも、透明水彩と顔彩で違いは感じられませんでした。
顔彩のいいところは?
私の思う顔彩のいいところは、「日本の伝統色でセットが組まれている」「透明水彩にはない色もある」だと思います。
日本の伝統色でセットが組まれている
セットを1つ持っていればその中から色を選んで塗っていくだけで、和風な色味の絵が描けます。
とくに、白群や群緑や鶯茶緑、本藍という絶妙な色も顔彩の24色セットには含まれています。
もちろん絵の具を混ぜれば作れる色ではありますが、自分の狙った色にいい感じに混色する手間がかかったり、毎回同じ色に混色できなかったりと心が折れる可能性をもっているので、最初から絵の具としてセットに入っているというのはとても便利だと思います。

雅な気分が味わえるよ♪
透明水彩にはない色もある
24色セットでは透明水彩でも代わりがききそうな色が多かったですが、吉祥は顔彩を100色も出しているので、その中には透明水彩では代わりがきかない色がたくさんあります。
特に白が混ぜてある色です。顔彩にはパステルカラーが充実しています。私が気に入っているのは、利休鼠と亜麻色です。

利休鼠はくすんだ緑にさらに白を混ぜたような色で、亜麻色は茶色に白を混ぜたような色です。こういう、彩度の低い色のパステルカラーはかなり珍しい色だと思います。私は持っていませんが、象牙色や曙色といった色も、絶妙なパステルカラーでとてもかわいいです。
また、パールやメタリックな色が多いのも特徴です。日本画では金箔を使うからか、顔彩でも金色やパール系の色味が充実しています。
そして透明水彩との色見本の比較のところでも書きましたが、自然な植物に使える緑色が充実しています。私は植物を塗るときに、「青瓷」や「青草」という色をよく使いますが、これは透明水彩では代わりがきかない色として重宝しています。

顔彩にしかない色もあるね!
透明水彩と顔彩は混ぜられます。ただし…
メーカーから推奨されている使い方ではありませんが、普通に使えます。
ただし、長期間の保存や展示などでは何かしらの変化をするかもしれないので、そのあたりはご自身の判断でお願いいたします。

自分で楽しむ範囲なら、混ぜても問題はなさそうかな
結論
それぞれの違ったよいところがあるので、お金や収納に余裕がある方は両方買ってみて、自分に合うと思う方を使っていくのがよいと思います。ですが、どっちかにしたい!という方は、さきほどあげた、顔彩のいいところに照らし合わせて考えてみてもいいかもしれません。
また、すでに透明水彩を持っていて顔彩を買おうか迷っている方は、顔彩のセットを買うのもいいですが、持っている絵の具にはない色を単色で揃えていくのもよいと思います。
関連記事
【アフィリエイト】
ここからご購入いただくと、私に少しだけ報酬が入る仕組みになっています。
Amazonはここから入ることで、ここに載っている商品以外のご購入でも私に報酬が入ります。

ここまで読んでいただきありがとうございました♪



